●5年前に見た夢の話 ○

ふと気が付くと業務スーパーの店内だった。

近くにセレブ風の女性としょぼくれたおじさんがいる。俺はお金持ちお姉さんの秘書ということらしい。下民の生活を視察したいと彼女が言い出したのかもしれない。

無性に梅干しが食べたくなり店内を見回すがどこにもない。

安売りの商品はないかと店員に聞く。端っこにある特価品コーナーに案内された。
聞いてもいないのにおじさんが言う「いつも老人ホームでやってんねんけど…」 
安売りしてる青ネギの外側の皮を一枚剥いて、ブロッコリーの茎に巻いた。ものすごい早技だった。
ブロッコリーも青ネギもぱっと見変化がわからない。これは達人の仕事だ。感心してしまった。
このままブロッコリーだけをレジに通せばネギの皮一枚分儲かることになる。

お肉コーナーを物色していたらパックとパックの間にiPhoneが挟まっていた。
拾ってすかさずホームボタンを押す。ロックはかかってない。たちまちにメモ帳の画面が開いた。
「これを見たあなたが女性なら連絡してくれ しなければどうなるかわかってるのか」そう打ち込んであった。

新手の脅迫風ナンパだろうか。気味が悪いので警察に通報した。すぐに警官2人組が来る。

「こんなiPhoneが落ちてたんですよ。気持ち悪くないですか。ところで、落ちてたもん拾ったから持ち主見つかったら取り分貰えるんですよね。これ四万円くらいで売れるからいくらか僕のものにならないですかね。」と掛け合うも証拠品だからダメだと叱られる。ダダをこね続けるもやはり駄目らしい。

 店内が混み始めて警官1人がレジの応援に行った。なんでもするんだな。

スーパーの端っこで不細工な青年が叫んでいた。
「おい!俺を見て笑ったやろ! あのケータイ見つけたやつ誰やねん! 俺はああやってナンパするしかなかったんや!」
 大声が響く。 店内に緊張感が走る。 暴力も辞さない勢いで男がこちらに近づいてくる。

 「喧嘩のときは普段から使い慣れてる道具を使うといい」そんな言葉を思い出した。

俺はどこからか太鼓のバチを取り出した。
太鼓の達人の要領で 「ドンドンドンドンドンドンドン!!」と叫びながら男の顔面を叩き続けた。