●使い捨てカイロは水につけても発火しない(らしい)○

親譲りの冷え性で小供の時から損ばかりしている。嘘こきました。大した損はしていません。

冷え性は本当、というか負の刺激全般に対する堪え性がなく、特に寒さ冷たさには全く耐えることができません。

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学生の時分は体育の時間に持久走をさせられたものですが、薄着で外に放り出されることのツラさったら。

うちの高校は指定のジャージが野暮ったかったのでお洒落意識の高い女子たちは上はジャージ、下はジャージ着用を厭いハーフパンツだけ、という姿で授業に臨んでいました。その彼女たちですら平気な顔をしている最中、上下ダサジャージに身を包んだ私一人だけが肩をすくめて震えていたのを覚えています。「オレが普通じゃないからこんな事になるのか?・・・ちがうだろ?・・・オレじゃなくたって・・・・・・・・」と、『ヒミズ』の住田くんよろしく惨めな気分になったものです。

今考えれば更衣室にいるうちにアップして身体を温めておくとか、肌着を2枚にするとか幾らでもやりようがあったのですが。視野が狭いというのは本当におそろしいことです。

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年齢だけは大人になった今でも冷え性と堪え性の無さは克服できていません。しかし!身の回りの問題を自力で解決しようとする意識は芽生えました。寒い寒い言うてるだけでは神様はどうにもしてくれないのです。

そこで靴下を2枚重ねにして、つま先用のカイロを足にくっつけて生活することにしましたが、これが良いのなんの。足先の縮こまりがなくなり、惨めな気分に襲われることもなくなりました。明るく楽しい気分になりさえします。頭寒足熱って本当ですね。

さあ、小銭を払えば大抵の問題が解決するこの資本主義の世の中を祝福しようではありませんか!ああ、金よ!科学よ!その御御足の塵を頂戴致します!

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世の中のことはさておき生活の話を続けましょう。

私はズボラなものですから、ある時靴下にカイロを貼り付けたまま洗濯機にぶち込んでしまいました。

学がないため不安になりこう思うのです。カイロは水に触れると発火してしまうのではないか、と。燃え盛る火は洗濯機の中から次第にその手を伸ばしていき、脱衣場、キッチン、冷蔵庫へと燃え移り末にはアパート全焼、責任を取らされて職を失い露頭に迷った私は、誰かが捨てた熱を失いつつあるカイロを手に取ってなんとか暖を取るのでしょう。

そんな未来はまっぴらです。愚妄に耐えきれずググりました。

「カイロ 水 発火」

名もなきチエリアンはかく語りき。

「そのような事はありません。」

さいですか。安心しました。

実際、それで火事になるような危険物は一般流通に乗りません。こんにゃくゼリーですらクラッシュされる世情です。

ただ、それを受けてまた別のことを考えます。世の中にある製品は危険性を排す代わりにその能力を発揮しきれていないことが多いのではないか。

100℃まで熱を持つことのできる使い捨てカイロ。そのカイロは凄く熱くなることと引き換えに、少しでも水に触れると爆発してしまいます。あるいは、アクセルを軽く踏んだだけで初速から5500km/hが出る爆速の車。口臭を消し去る代わりに骨が溶けるブレスケア。地球破壊爆弾。

これらの馬鹿げた製品は理論上、開発可能かもしれません。しかし危険だからとか売れないからとか諸々の事情で一般の世に出ることはありません。生み出される事もないでしょう。でもそれって何か勿体無いような気がしませんか。人間の都合で物が持つべき本来の力が抑えられているようで。

それと同様に、我々も世の中に合わせて自分自身の潜在能力を蔑ろにしているのではないですか。

世間の目やリスクを言い訳にしなければ100℃まで熱を持てるのではありませんか?そろそろ目醒めて熱く生きる事にしませんか。

さあ、情熱の真っ赤な薔薇を咲かせましょう!棘に少しでも触れると忽ち命が絶たれるような、毒々しい薔薇を!