Q.試験管みたいなのからチューブがふたつ出ていて、チューブの一方を咥えて息を吸い込んでその吸引力でもう一方のチューブから虫を捕獲する道具の名前は?

A.吸虫管。ゾウムシや蚊など主に5mm以下の手では直接捕まえづらい虫を採集するときに使う。

↓こういうやつ。短い方のチューブをくわえる。



ググって学んだことを発表しつつ日記を書く試み第二回。以下は吸虫管にまつわる話である。


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保健所職員が蚊を捕まえるため、僕の勤務先にやってきた。なにかの調査のためだという。

職員さんは20代にも見える若い男女ふたり。愛想のよさそう人たちだったので、お願いして採集の見学をさせてもらうことにした。

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養蜂家みたいに完全防備

採集した蚊は衛生環境研究所なる施設に送るのだという。聞いたことのない施設だが、それに類するものは各都道府県にひとつはあるようだ。

県内には調査のための蚊の採集スポットがいくつか定められていて、そのうちの一ヶ所が高千穂にあるものだから、町内の保健師が対応しなければならないという話らしい。

職員さんに続いて歩いてスポットにたどり着き、さっそく採集が始まった。草木の茂った日陰で柄のない大きな網をぶんぶん振り回している。

「いないねー」
「この葉っぱのところにいるのは違う?」
「ぞわぞわしてきた」

仲がいいのか和気藹々としている。

特定の蚊が必要なんですか?聞いた。

「ヒトスジシマカですね」

よくいるやつのことだ。

「これは違うよね?緑だもんね!?」
「同定は研究所の人がするからとにかく捕まえて!」

漫才か。

男性の方は手慣れた様子で網を泳がせて、何匹も捕まえている。

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写ってないけど5匹くらいゲットしてた

「ここからが大変なんですよ!」
「気持ち悪いんです!」

10分くらい一緒にいたら関係もほぐれてきて、いろいろ説明してくれるようになった。

ここで満を持して登場するのが吸虫管だ。

網を小さくしぼって蚊の自由を奪い、吸虫管のチューブを隙間突っ込んで蚊の方に向けてから息を吸い込む。

スポッ!という音こそ鳴らないものの、蚊はスルッと管の中に入っていった。おもしろい。

下手をすれば口の中に蚊が入ってきそうなものだけど、そんな事故は起こらなかった。

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吸虫管のチューブを突っ込むシーン。長い方を蚊に向けて、短い方から吸い込む

悪戦苦闘されている様子をじっと見ていたら、僕の腕にヒトスジシマカが止まった。

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蚊は写っていません

好機と捉えて腕の筋肉にグッと力(ちから)を入れて蚊を逃げられなくする。そうすれば皮膚に刺さった蚊の針が抜けず、逃げられなくなると聞いたことがある。

ほら!1匹腕にいます!捕まえてください!吸虫管を持っている女性の職員さんに呼びかけた。

「本当だ!いますね!」

……ぱしっ。

なんと職員さんは吸虫管を使わずに、僕の腕に止まっている蚊を手で優しく叩いたのである。

しかも的が外れて蚊は颯爽と逃げていった。

その場の全員がなんとなくヘラヘラする。愛しきまぬけな時間。

それから蚊の入った管をケースにしまうところまで見学して、飽きてきたのでお礼を言って立ち去った。

何を調べるために蚊を採集しているのかは最後まで聞かなかった。おれはEテレやってんじゃねーから。