大学4回生の頃にブログを開設した。

やってみた系の記事が中心のブログで、デイリーポータルの投稿コーナーで紹介してもらったこともある。思い出せる限りではこんな話を書いていた。

スイカ割りってどう思う?農家さんに聞く

動物にエサを撒いて自分で食べる

演奏会で寝てる人どう思いますか?現役オーケストラ団員に聞いた

もしも僕が奈良の大仏だったら、僕の鼻腔の大きさの穴を蟻の修学旅行生がくぐるだろう


今に繋がる可愛げのなさだ。自我を、あるいは自己の連続性というものを、いま、信じることができます。感謝いたします。

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そのブログのタイトルが『アレグロ・コン・フォーコ』だった。クラシック音楽などで使われる用語である。

「情熱を持って速く」と訳している人がいて、それが気に入っていたので僕もそう解釈している。

「Allegro」= 速く
「Con fuoco」= 情熱的に、生き生きと

ドヴォルザークの交響曲第九番、いわゆる「新世界より」の四楽章はアレグロ・コン・フォーコで演奏するように記されている。

同曲を幾度か演奏する機会があり、曲としても好きだったのでそこから拝借してブログタイトルにしたのだ。

ブログ運営はデイリー効果もあって好調で、少しではあるが広告収入も入ってくるようになった。大学を出たあとも細々と記事を書きつづけていた。

ところがコメント欄を開放していたことが災いし、一気に熱が冷めることになる。最新のエントリにこんなコメントがついたのだ。

「アレグロ・コン・フォーコ」と検索すると、音楽に関係のないこのサイトが最上位に出てきます。さすがデジタルネイティブ世代は節操がないですね

これに僕はひどく落ち込んでしまい、問題から逃避するためにブログを非公開にした。

ブログ名を設定するときにSEO対策を考えていないわけじゃなかった。その点、アレグロ・コン・フォーコは絶妙だ。

当時は古めかしいクラシック音楽解説サイトしか上位に出てこなかったし、かといってまったく検索されない言葉というわけでもない。

そのスケベ心を見透かされている感じがして恥ずかしかったのだ。

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今のこのブログタイトルなら文句のつけようがあるまい