
僕らが夢見た理想郷がなんと宮崎にありました。その名も神田川グルメ館ヘルストピア店。しゃぶしゃぶと焼肉をメインに据えたバイキング形式の飲食ですが、侮るなかれ。ランチではたったの1,750円でお肉が食べ放題になるうえに、サイドメニューも寿司に天ぷらにチキン南蛮とかなり充実しているのです。
牛肉を食べるには追加料金が必要?ドリンクバーは別料金?ノンノンノン。すべて込みで2,000円未満。安いばかりでなくお惣菜の類が身近な家庭の味付けでとても美味しいので、観光向けじゃない地の料理を食べたいという方にもおすすめです。
ということで今回は宮崎県民ご用達の神田川をご紹介。

ちなみに「高千穂」から「高千穂牧場」までは車で3時間かかる
今回紹介するのは宮崎県の延岡市にある「神田川グルメ館ヘルストピア店」という店舗です。
延岡市は宮崎県北部の海沿いの町で旭化成発祥の地として知られており、ノーベル賞を受賞した吉野彰さんがリチウムイオン電池の実験をした場所としても有名ですね。
実は、宮崎県北の山間部に住む住民にとって延岡市は最も身近な大都市。僕が小さなころ、叔父さんが車で1時間以上かけて高千穂から延岡まで遊びに連れて行ってくれたのを覚えています。今は道が良くなって高千穂-延岡間は40分ほどで行き来ができますので、観光の折にはルートに組み込んでもいいかもしれません。

神田川は宮崎県内で展開する飲食店グループ。本店はお寿司屋さんですが、延岡市と都城市にある2店舗では食べ放題を楽しむことができます。ちなみに延岡市には店舗が2つあってそのうち1つが食べ放題店なので注意して下さい。
ランチの場合は1,750円という破格でバイキングを楽しむことができます。ディナーコースは2,000円ちょっと。焼肉かしゃぶしゃぶが選べるのですが今回はしゃぶしゃぶコースを選びました。平日の17時過ぎに入店しましたが、他のお客さんはいらっしゃいませんでした。

寿司!

肉!

おそうざい!
この世においてこれ以上の何を求めようというのでしょうか。心躍らなきゃウソですよ。
神田川のお惣菜では何と言ってもチキン南蛮がおすすめ。しっかり甘酢に漬け込んである鶏肉と、卵の白身が粗めにマッシュされたタルタルソース。個人的な話で恐縮なのですが、これがちょうど僕の実家の味なんですよ。
ところで、宮崎には「日向時間(ひゅうがじかん)」という言葉があります。会議に遅刻は当たり前、時間にルーズな宮崎県民の独特な時間感覚を開き直って言う語です。また「てげてげでいっちゃが(テキトーでいいよ)」「どげでんいっちゃが(同)」という言葉もよく耳にします。京都育ちで神経質な私はハラハラすることが多いですが、どちらも宮崎県民のおおらかさやのんびり加減をよく表しているものです。
そんな温厚な宮崎県民ですが、唯一眼光を鋭くするのがチキン南蛮について語るとき。宮崎県出身の漫画家、東村アキコ先生もチキン南蛮のことを描いています。
「でもこれはチキン南蛮じゃないっ」東村アキコ『ひまわりっ 健一レジェンド』7巻,講談社,2008
ひとくちにチキン南蛮と言ってもいろいろあるんです。上の漫画で言われているような「鶏の甘酢あんかけ」は論外としても、使われている鶏肉はムネ肉かモモ肉か、皮は残してあるか取り除かれているか、タルタルソースの具に玉ねぎ入れるか入れないか、甘酢はしっかり切るのかしゃばしゃばで出すのか、温かいか冷たいか。「これは鶏の唐揚げに甘酢あんかけをかけただけだッ!」東村アキコ『ひまわりっ 健一レジェンド』7巻,講談社,2008
特にムネ肉かモモ肉かというのは宮崎県民にとっては一大事で、ハト派タカ派ならぬモモ派とムネ派の両党員が夜な夜な激論を交わしているというのは有名な話です。
これを書いている私はどうかと言えばですね…
断然、モモ派なんです。脂分をたっぷりと含んだモモ肉をしっとり柔らかく揚げて甘酢に漬け込むことでサッパリさせたかと思いきや、ボリューム感のある甘めのタルタルをかけてまた重たくするというアンバランスさがチキン南蛮の良さだと思っていますから。ムネなら食わんと言い放つくらいのモモ過激派です。モモこそがチキン南蛮と呼ばれるにふさわしいのです。モモバンザイ!東村アキコ『ひまわりっ 健一レジェンド』12巻,講談社,2009
そして、ここ神田川ではモモ肉のチキン南蛮が提供されているのです。やったぜ。
サラダコーナーの玉ねぎをトッピングすると120%実家の味になるんですよ。それでは、いただきます!…もそもそ、ん、何かがおかしい。ひとくち食べて違和感。チキン南蛮を噛んだ時にジュワッとしみ出る甘酢と鶏の脂のハーモニーがまったく感じられない。それに噛みごたえのある食感。これは少なくともモモ肉ではない。まさかとは思うがムネにかわったのか?身の毛がよだつ。店員さんに聞いた。
―――このチキン南蛮ってもしかしてムネ肉ですか?
店員さん:多分そうだと思いますけど、固かったですか?
―――いえ、そういうことではないです。前はモモ肉だったはずだと思いまして。詳しく分かりますか?
店員さん:…確認取れました。前まではモモ肉だったんですけど、今はムネ肉みたいですね
いまはムネ肉みたいですね…
いまはムネ肉みたいですね…
いまはムネ肉みたいですね…
遠き母のおもかげが薄れていく。

心霊写真みたいになりましたが総員生きてます
神田川と書いて実家と読んでいた私もこれには大ショック。ムネも間違いなく美味しいんですけど、これじゃないというか、何と言いましょうか。ああ、ふるさとが音を立てて崩れ去っていく。故郷とは悲しくうたふもの。なにが起きるのか分からないのが人生…。無常無常無常。執着を捨てて輪廻の輪から抜け出すのです。サンスクリット語でアハンは私。アハンカーラは我執。

動揺を隠しきれませんが気を取り直して神田川の話に戻りましょう。メインのお肉に触れていませんでしたが、これがなかなかどうして美味しく食べられます。他の低価格の食べ放題店だと紙みたいな肉が出てきて驚くことがありますが、それとは比になりません。


何度も書きますがこれだけ豊富なメニューが食べ放題で2,000円ちょっとなんですよ。百年やそこら前の大金持ちにしかできないような贅沢が、今や高校生が2時間働いて得られる賃金で体験できるのだから先進国の豊かさはすごい。よく考えてみれば、ワンコインでパック詰めされた安全な食肉が手に入るというのは人類史上稀なことです。

小さいながらもスイーツコーナーがあるので、食後の楽しみもバッチリサポート。写真には写っていませんが他にチョコレートフォンデュやアイスもあります。時間制限は通常コースで90分、宴会コースで2時間30分なのでゆっくりできますよ。

さて、今回は僕の心をつかんで離さない「神田川グルメ館ヘルストピア店」を紹介しました。店員さんに清潔感があって親切ですとか、ドリンクバーのコーラがペプシで嬉しいですとか、他にも魅力はたくさんありますのでぜひご自身方の目で確かめていただきたく存じます。妥協して得体の知れない店に入るより絶対良いです。観光の方はまず候補に上がらないお店だと思うので他とは違う体験がしたい方にもオススメです。
以上、宮崎より愛を込めて。
【神田川グルメ館ヘルストピア店】
住所:宮崎県延岡市長浜町3丁目1954-2
定休日:月曜日(変更の場合あり)
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