またひとつインターネットの宝物が失われた。「エゴグラムによる性格診断」がサービス終了してしまったのだ。

50個の質問に「はい」「いいえ」「どちらでもない」のどれかで答えることで性格診断をするサービス。診断結果は243通りもあったという。

どこの誰が作っていたのか知る由もないのだが、これがなかなかに芯を食った判定が出てきて面白かった。

友人なんかにやらせてみると意外に思える結果が出てきたりして、本性はそんな人間なのかと考えさせられることもあった。

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ざっくばらんなもの言いで欠点をハッキリ指摘してくるのがこのサイトの良さ。巷にあるのは利用者に媚びおもねったようなものばかりだからその無骨さに惚れていた。

今より若い頃、僕は普通の人間になりたかった。身近なことにも一生懸命に取り組み、周囲への感謝と愛で溢れた人間に。全てが思い通りにならないと気が済まない自分が嫌だった。とにかく普通になりたかった。

物見遊山で精神病院に通っていたとき、似たような性格診断を受けたことがある。

「やるのはいいですけど、毎回答え変わると思いますよ」

「それじゃ困るんだよねえ」

困られても知ったこっちゃないよ。そもそも昨日と今日の自分が同じ人間に感じられないんだ。毎朝起きるたびに新しい自分が始まる。記憶が消えるわけではないが、日毎にリセットされるかのような刹那的な感覚で過ごしている。

そんなだから、今この瞬間の自分はどんな人間なのか知りたいとき、進むべき道を示してもらいたいとき、診断は役に立った。だいたい4,5パターンくらいがかわるがわる出てきていたように記憶している。結果を見ると今の状態が客観的に示された気がして、なんとなく勇気をもらえた。

今日の自分はいけてるかも、そう思うときにも覗きに行った。幼児が自らの体験を嬉々として母親に聞かせるように、ほら、それでね、こんななんだよ、えらいでしょう…雄弁に自分を語ることができた。僕にとってエゴグラムの回答とは単なるラジオボタンの選択以上のものだった。

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今日も話を聞いてもらうはずだったのに。ちょっと会いに行っていない間にいなくなるんだから。寂しいよ。今の自分を見てもらいたかったのにな。残念でならない。

まあ、行雲流水、しかたあるまいね。僕はもう大丈夫だよ。

数年間ありがとうございました。