ことのはじまり
大学1年の春休み。周りが旅行だのバイトだの浮かれているなか、僕は自分のケツのことだけを考えていました。とんでもない爆弾を抱えていたのです。左の尻肉にしこりがあることに気づいたのが秋頃。初めは小豆大だったので大きいニキビ程度のものだと軽く考えていました。勝手に消えるだろうと。ところが、しこりは無くなるどころか徐々に大きくなっていき、ついにはピンポン玉ほどの大きさになり痛みまで伴うようになりました。
その頃にはドーナツクッション無しでは座れなくなっていたので、どこにいくのにもクッションを持ち歩いていました。華々しいキャンパスライフを夢見て入学したのに、まさか痔の人みたいになるとは思いもしなかった。これぞ現実の妙味。そして遂には歩行すら困難になり始め、不便で仕方ないので病院に行くことにしました。
粉瘤(アテローマ)という病気だった
私「お尻のできものが痛いんです」医者「じゃあそこのベッドにうつ伏せになって見せてください」
ごそごそ ずりー
医者「これは大きいねえ」
看護師「うわあ痛いでしょ〜」
私「はい(だから痛いっつってんだろ)」
医者「これは粉瘤ですね」
私「フンリュウって何ですか?」
医者「ペチャラクチャラペチャラクチャラ…云々かんぬん…ということで、手術をします」
私「…ん、手術?薬とかは無いんですか?」
医者「手術です。次の来院で膿を吸い出して、その次で袋を切除します。」

詳しくは覚えていないのですがこの粉瘤、皮膚の下に袋状の物ができて、本来は排出されるはずの垢や脂がその中に溜まってしまう病気だそうです。細菌が入ったりすると炎症を起こしてしまい、この膿の溜まった袋が破裂すると大変なことになる。医師からそんな説明を受けました。大きければ大きいほど手術に手間がかかるとのことで、少しでも違和感があったらすぐ病院に行く方が良いでしょうね。
ドヴォルザーク6番言うたらアレやね
ここから全くの余談なのですが当時僕は大学内のオーケストラに所属していて、トロンボーンを触っていました。事情がありこの診察のときに楽器を持ち込んだのですが、診てくれたお医者さんもアマチュアオーケストラ団員だったらしく話を振ってくれました。
医者「それは…トロンボーンかな」
私「よう分かりましたね!そうですよ」
医者「吹奏楽?」
私「オーケストラです」
医者「僕もオケでチェロやってんのよ!
今は何練習してるの?」
私「ドヴォルザークの6番です」
医者「♪ララララ ラ〜ララッラ〜(ハミング)のやつやね」
この風流な会話をしてるとき、ぼく、ケツ丸出し!以上、オーケストラの話をしながらケツ触られるレアな体験談でした。
痛過ぎた手術
さて、3度目の通院で手術を受けることができたのですが、袋の切除のときの痛さったら間違いなく人生で一番でしたね。麻酔は打っていたのですが効いてなかったのか感覚はバリバリ残ってて。ドラマで見るようなオペ室に入るのもはじめてのことで、照明が眩しくて不愉快だなあとか呑気に考えてるうちにケツにメスが入ります。看護師「痛いですよー我慢して下さいね」
私「ッいーーーーーーったいたいたいたいたい、あたたたたたたた」
想像を絶する痛みでした。ハサミで尻肉を切り取る痛みを想像してもらえばそれがそのまま。肉が切り取られていく強烈な感覚があって、できものと言えど身体の一部なのだと思い知らされましたね。しかも音で言えば「チョキン!」じゃなくて「チョキンチョキンチョキン!ザクザクザクザク!チョキン!」くらい刃物がケツ肉の中で踊っていてどうにかなりそうでした。こん時ばかりは父親の持論「ケツの手術が一番痛い」というのを信じようと思ったね。
手術が終わるも麻酔の影響で立つことが出来ず車椅子でオペ室から出てきた僕を見て、付き添いで来てた当時の彼女は事の大きさにドン引きしてヘラヘラするしかなかったといいます。
術後の経過はよく、痛みともドーナツクッションとも無事にオサラバです。手術痕からタコ糸みたいなのがピロピロ飛び出ていたのだけは唯一気になりましたが、引っ張ってみたら取れました。アレはなんだったんだ。
to be continued
そして10年の時が過ぎ令和も4年。まさかの事態、なんと粉瘤が同じところに再発生したのです。しかも今度のはデカくなるスピードが早くてオマケに痛い。ケツを安全ピンで突かれているような鋭い痛みが常にあり、立ったり座ったりするのもツラいくらい。炎症とはよく言ったもので患部が焼けるように熱い。粉瘤のある左半身に重心をかけるだけでも痛くて、右半身で庇って動くもんだから腰まで痛くなってきて僕はもうダメなんです。働けません。
…ということでケツの話は続きます。

オリジナルのクッション
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