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子供のころ、運動嫌いの僕らは外で遊んでいた。
外に出てゲームボーイアドバンスやカードゲームを触っていた。どうという事はなく、家の中には大人の目があって不自由だから仕方なく外に出ていただけだった。

公園、ガレージ、マンションのエントランスホール。雨の日も風の日も、時には寒さに震えながらもゲームに熱中した。
…そう、熱中できていたのだ!
雨風を物ともせず、目の前のバトルゾーンに。傷だらけの液晶画面に。

大人になった今、外でゲームを遊んだらどうなるのだろう。

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そんな訳で休日、ボードゲームをめいいっぱい積み込んだ車を走らせた。助手席には対戦相手。野外でソロプレイはさすがに奇天烈が過ぎます。

どうせなら邪魔する者のない景色の綺麗な場所で遊びたかったので、森で遊ぶことにした。現代人のほとんどは森に用事がないという話もあるし、ここなら人目を気にせず遊べるはずだ。

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ドイツのボードゲームの特徴の一つが、コマや部品が木製だということ。温かみのある手触りは没入感を高めてくれるし、なんとなく高級感もある。
今回はフィールドが森ということで木製のゲームを用意した。

『スティッキー』

絶妙なバランスで立っている棒束の中から、交互に1本ずつ棒を引き抜いていくバランスゲーム。二人プレイの場合は倒したほうが負け。ダイスの目に従ってどれか一色の棒を抜いていく。この場合は赤の目が出ているので赤の棒を抜けば良い。上手にやれば残り3本になるまで続けることができるが…

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かたん。じゃらら。
3本目を引き抜こうとしたところ、無情にも束が倒れてしまった。まだ始まったばかりだと言うのに。

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なぜなら机の傾きが尋常ではないから。欠陥住宅どころの騒ぎじゃない。
でもね、そんな小さなことはどうでもよくなるんです。机が傾いていようが、棒が倒れようが、そんなことは知りません。外に出て地べたでゲームやってたらそんな気持ちになります。

普段はルールと公平さに厳しい私だが、早朝の寒さと土の温度、スズメバチの羽音、あたり一面の木々…日常で感じることない自然の力に触れると細かいことは気にならなくなる。

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森でゲームを遊ぶと→勝ち負けとかどうでもよくなる。

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森を後にした我々は次の目的地へと向かった。
異なる環境に身を置けばゲームのプレイ感も変わってくるはずだ。

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見ての通り滝である。
迫力に気圧されながらも、近くの岩に荷物を置いてそそくさとゲームの準備をする。

自然の中でボードゲームの箱を開けているときの気持ちは、ピクニックでお弁当を広げたときのそれに近い。非日常的な行為へのワクワク感がある。外でゲームをやる必要なんて無いのはハナから承知だが、実は外でご飯を食べることにも意味なんて無いのだ。虫飛んでくるし、バランは飛んでいくし、そもそも家で食べればいいし。それでもレジャーシートを敷いてご飯を食べるのは楽しい。普段絶対にやらないことだから。それと同様に外でのゲームはいつもと違う楽しさがある。

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『ワニに乗る?』
ワニの上に可愛らしい動物たちを載せていくバランスゲーム。コマは木製でしっかりとしていて、手のひらでじゃらじゃら転がすだけで楽しい。
ド派手な崩し方をすると動物が滝壺に落ちるというゲーム外のスリルがあり、いつもより身が入る。

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写真で見るとめっためた楽しそうに見えるのが野外ゲームのいいところ。プレイヤー後方に薄っすらと虹が出ている。

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嘘みたいな話だが虹の他に蛇も見つけた。字が似ている。部屋でゲームをしているだけでは掴む事のできなかった小さな奇跡である。虹と蛇を同じ時同じ場所で見つけてかつ蛇のコマを持っているなんて!
こういうことがあると神様に愛されてるなあとか生きててよかったなあとか思いますよね。

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滝でゲームを遊ぶと→小さな奇跡が起こる。
あっ、そうそう。滝の水音ですが、ゲームをやっていると意外と気になりませんでした。

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森、滝、ときて次は原っぱにやってきた。これまでで最も人の手が入っている場所である。ここの良さは平らかであるということ。盤面のゆがみを気にすることなくゲームに集中することができそうだ。

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『ガイスター』
良いおばけ(青)と悪いおばけ(赤)を将棋の要領で1マスずつ縦か横に動かして、相手の良いおばけを4つ取るか、相手に悪いおばけを4つ取らせるか、自分の良いおばけを相手側両端の矢印に進めることができたら勝ち。簡単なルールにも関わらず悩みどころがあって初心者でも遊べるゲームである。

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黙々とプレイする。ガイスターは将棋のように心のなかでふむふむ言いながらコマを動かすゲームなのだ。静かなこの場所の雰囲気にちょうど合っている。3回やって全て勝利した。はっはっは。悪いおばけを4つ取らせて勝ったときが一番気持ちいい。原っぱでのゲームは森と滝のときほど違和感がなく、集中してプレイできた。

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原っぱでゲームを遊ぶと→森と滝より集中できる。

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自然を感じたいなら森へ、小さな奇跡を起こしたいなら滝へ、集中したいなら原っぱへ。
普段触れているアナログゲームの新たな一面を発見することができた。海、洞窟、宇宙、もっと遠くの色んな場所で遊んでみたい。いったい何が起こるのか。

今回は人数の関係で遊べる作品が限られたのが心残り。仲間がいればゲーム選びの幅が広がってより楽しめたのに…。仲間がいれば…仲間……。